第140号【同時代史学会・2022年度大会「70年代の国際関係の変動の歴史的意義を考える」】

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          同時代史学会電子メールニュース

                    第140号(2022年9月14日)

【同時代史学会・2022年度大会「70年代の国際関係の変動の歴史的意義を考える」】
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2022年度大会「70年代の国際関係の変動の歴史的意義を考える」

 今年度の同時代史学会大会を、12月3日(土)に開催します。
 今年度の大会は日本大学法学部10号館(東京都千代田区神田三崎町2-12-1)
及びオンライン(ZOOM)によるハイブリッド開催と致します。

 Zoomでのご参加については、10月初旬よりGoogleフォームにて参加申請を承
ります。さしあたり、今年度の日程についてどうぞご予定ください。

 今年度の大会のスケジュール、大会の趣旨文は以下の通りです。
 *午前中の「自由論題報告」はまだ募集中ですので、振るってご応募下さ
い。
 *報告者の報告論題、報告要旨はMLにて随時お知らせ致します。


タイムスケジュール
(自由論題報告 9:30ZOOMアクセス開始)
 10:00~12:00 自由論題報告

(総会 11:30ZOOMアクセス開始)
12:00~13:20 総会
 *本年度は規約改正及び研究倫理規程の制定等、議題が多くありますので、
よろしくご参加下さい。


(全体会 13:00ZOOMアクセス開始)
 13:30~17:30 全体会

全体会 「70年代の国際関係の変動の歴史的意義を考える」

                        趣旨文

 今年は沖縄返還、日中国交回復から50年という節目の年である。だがこれは
独り日本という国に生じた特殊なエピソードというわけではない。そこには、
1960年代半ばから米国が本格的に介入した冷戦の熱戦化の典型であるベトナム
戦争や、それに端を発した反戦運動の興隆の影響があったことは明らかであ
る。さらに、その背景には、いわゆる「1968」に象徴されるフェミニズムや労
働疎外などに取り組む若者中心の広範な社会運動と、それを受けた各国の政治
的動揺があった。
 同時に、国際関係そのものにも地殻変動が起き始めていた。西側諸国との経
済・軍拡競争に疲弊したソ連・東欧圏の西側への接近と、それに端を発した中
華人民共和国の立場の変化、「第三世界」勢力の登場と異議申し立てのインパ
クト等。新たな状況によって、第二次世界大戦の勝者たちが形成した戦後秩序
にそもそも伴っていた妥協的側面の限界が露呈したことも、1970年代の変動
の、より大きな背景を形成していた。1972年の2つの出来事は、その日本的な
現れに他ならなかった。
 1970年代を1つの大きな時代の転換点とみる試みは、当然のことながらこれ
までにも多数試みられている。同時代史学会でも、すでに2010年度大会「転形
期―1968年以後」において、1960年代から80年代を1つの長い転換期と見立
て、諸運動の転換とその意味を検討した。2017年度大会では歴史民俗博物館の
企画展示と合わせ、「「1968年」を測り直す―運動と社会の連関、その歴史的
射程」と題して、地球規模の共時性を持つ1968~69年の若者たちの運動の歴史
的意義をあらためて掘り下げた。また2014年度の「『復帰』後の沖縄を歴史化
する」では、沖縄に焦点を絞る形で、1972年以後の変動が持つ意味を再検討し
た。
 このような検討が進めば進むほど、1970年代の転換は、その後にどう活かさ
れたのかという問いが浮上してくる。冷戦終焉直後の1990年代初頭には、それ
までの運動の蓄積が戦争責任・植民地支配責任の問題などで多大な成果をもた
らしたにも関わらず、その後、歴史修正主義と新自由主義に席巻されてしまっ
たのはなぜか。この点についても、当会では2018年度大会で「転換期としての
1990年代」と題して1990年代の歴史化を始め、2019年度大会「〈戦争の記憶〉
をめぐる同時代史―歴史表現はどう向きあってきたか」では、90年代の遺産の
前提にある、1970~80年代のさまざまな試みについて、表現方法の観点から検
討を加えた。
 今年度はこれらの成果をふまえつつ、次のような視点で、議論をさらに展開
していきたい。先に述べた、60年代後半に始まる国際的な文脈を、日本はどの
ように受けとめたのか。この点を、従来のように日米・日中といった大国間関
係のなかだけで捉えるのではなく、新たな「国際関係」の視点を探ることで、
重層的に理解する道を拓きたい。1970年代の日本において、その焦点のひとつ
はアジアといかに向き合ったかに絞られるが、それを今日、どの側面で捉え究
明するのかが、同時代史の研究では試されるだろう。
 そこで本年度の大会では、以下の構成によって、1970年代の国際関係の変動
が持つ歴史的意義を再考する。
 まず東アジア国際関係史を専門とする成田千尋氏に報告をお願いする。成田
氏は、1972年の沖縄返還を、日米関係だけでなく、大韓民国や中華民国の側か
らも捉え直し、そこに関わる複数のアクターからポストコロニアルの課題を浮
かびあがらせた。その成果をふまえ、1970年代の日本が、東アジアにおいて何
を問われていたのかを浮き彫りにしていただく。
 次に、社会学を専門とする木下直子氏に報告をお願いする。「慰安婦」問題
は1990年代になぜあのような形で注目されたのか、そしてそこで語られないも
のはなんだったのか。その究明には、60年代以来のフェミニズム言説を中心と
して、日本社会の「慰安婦」をめぐる言説史と、語る主体の歴史的検討が必要
になる。この点を深めてこられた木下氏に、60~70年代のアジアとの直面がも
たらしたインパクトと困難性を考察していただく。
 この2報告に対して、アメリカの国際関係思想史を起点として、国際関係に
おける正義や記憶の問題を幅広く論じられている三牧聖子氏、沖縄における
「慰安所」と地域住民との関係を拠点として、東アジアの戦争や植民地の記憶
を捉え直されている洪玧伸(玧は王ヘンに「允」)氏のお二方にコメンテー
ターをお願いした。今回の主題に連なる多様な文脈を明らかにしていくこと
で、議論の豊富化を図りたい。
 以上の構成と当日の議論によって、1970年代像の更新や、1990年代半ば以降
の大転換に至る歴史像の構築の一助となれば幸いである。
参加者諸氏の活発なご議論を期待する。

 趣旨説明:13:30~13:40
<報告>
 成田千尋(立命館大学衣笠総合研究機構):13:40~14:30
 木下直子(特定非営利活動法人社会理論・動態研究所):14:40~15:30
<コメント>
 三牧聖子(同志社大学 大学院グローバル・スタディーズ研究科):15:40~16:00
 洪玧伸(玧は王ヘンに「允」)(一橋大学):16:00~16:20
 全体討論:16:30~17:30

 実り多い議論のため、会員の皆様の周知・宣伝のご協力をお願い致します。

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