本学会は2002年の設立趣意書において、「戦後改革の遺産を忘れて時代の方向性を見失い、知の根拠地すら喪失し始めている」という危機感から、「『同時代としての歴史』から何を学び、何を継承すべきなのか」という課題意識を表明した。それに照らしてみた場合、この度の日本学術会議第25期推薦会員任命拒否問題は、「戦後改革の遺産」として獲得された基本的人権、なかでも「学問の自由」「思想の自由」および「表現の自由」を正面から侵すものであると受け止めざるを得ない。
この問題において政府は「総合的、俯瞰的」な判断という曖昧な説明を繰り返し、任命拒否に至る公文書の開示を拒否することで、説明責任を放棄している。また、証拠に基づかない不正確な情報を政府関係者が流布するような動きも起きている。いわんや、報道にあるように、任命を拒否された6名が政府に批判的であったことが理由であったのであれば、これらの一連の政府の振る舞いは、人権の歴史の歩みを後退させるものであると言わざるをえない。
本学会は任命拒否に強く抗議するとともに、政府に対し、まずは今回任命を拒否された被推薦者を改めて任命すること、そして史資料に基づく実証性が将来にわたって担保されるよう、任命拒否に至った経緯についての説明責任を果たすことを求める。加えて、長い歴史を経て獲得された「学問の自由」「思想の自由」および「表現の自由」といった基本的人権を政府は尊重しなければならないという原則をいま一度顧みることを、現在の政府に求めるものである。
2020年12月13日
同時代史学会