2007年度大会へ向けて

同時代日本への歴史的接近

三宅 明正(千葉大学)

 同時代史学会は、2002年12月に正式に発足しました。本2007年12月の大会は、したがって5周年の大会となります。

 今回の大会では、5周年というひとつの画期にふさわしいものにしたいと考え、担当理事ならびに理事会で検討を重ねてきました。

 そして、「同時代日本への歴史的な接近」をテーマに掲げ、異なる領域から変転著しい同時代の歴史的位置を照射してみようとすることにいたしました。

 1945年以降現在へといたる時代をみると、そこには政治的・経済的・社会的・文化的にさまざまな変化、それも構造的ないし段階的といいうる変容・転換が見いだされます。これまでに使用されてきた「55年体制」や、「高度経済成長期」といった用語も、その設定によって対象を構造や段階として把握しようとする物差しの一つです。

 改めて述べるまでもないことですが、時代を計る物差しは一つではありません。また同じ人間が用いる場合にも、その時の課題に応じて多様な物差しを用います。今大会は、このようにさまざまに設定されうる物差しを視野に入れながら、同時代史にどのような区分を見出すことができるのか、それによってどのように対象を分析し把握できるのか、問い直したいと考えています。

 同時代日本への歴史的接近と言った際、多くの人の間には次のような共通了解があるように思われます。それは、「55年体制」あるいは「高度経済成長」といった時期に形成された日本社会のありようが、20世紀末以降大きな変容を遂げて21世紀に至ってきているということです。

 かつて1980年代の後半からしばらくの間、「企業社会」論が一世を風靡しましたが、現在の日本社会をその単純な延長線上に描くことはできません。ではいったい何がどう変わってきたのか。あらためて社会なり企業なり、そのもののありようから問い直す必要があると思われます。

 報告者とテーマ、コメンテーター、ならびに司会は以下の通りです。

 渡辺治(一橋大学)「同時代日本社会の歴史的位置をさぐる」

 野村正實(東北大学)「会社とは何か――雇用の歴史から考える」

 コメント 1 中西新太郎(横浜市立大学)

      2 崎山政毅(立命館大学)

  司会 有山輝雄(東京経済大)、原山浩介(国立歴史民俗博物館)

 報告者の渡辺治氏は、政治学・憲法学がご専門で、近著に『安倍政権論』(旬報社)やハーヴェイ『新自由主義』(作品社)の監訳書があります。近代現代の日本をとくに政治的な対抗に力点を置いて歴史的・構造的にとらえる、代表的な論者です。また、かつての著書『豊かな社会日本の構造』は、実に多くの読者を獲得し、そのいくつかの章は、一時期の日本の大学入試で小論文用に多用されたという逸話もあります。

 同じく野村正實氏は、経済学における労働研究者です。ドイツ労資関係から出発して近年はもっぱら日本の労働研究に携わり、近著に『日本的雇用慣行』(ミネルヴァ書房)があります。そこでは「終身雇用」や「年功制」という把握がいかに部分的であるか、雇用の全体像がどうとらえられるべきかが追究されています。氏はまた広く、日本の社会・人文科学における用語の問題性を問い続けてもいます。

 これらお二人の報告を受けて、専門分野を異にする次の方々から、長めのコメントをしてもらうことにしました。

 コメンテーターの中西新太郎氏は、とくに日本の青少年の問題を、広く政治・政策と社会のありかたとのかかわりで追究し、鋭い問題提起をされてきました「NPO前夜」の同人でもあり、またその文章が大学入試センターの現代文に掲載されたことからもわかるように、正確でわかり易い文章を書かれることでも知られます。

 同じく崎山政毅氏は、ラテンアメリカを軸とした、「第三世界」の歴史・文化・思想研究が、主な研究分野です。ラテンアメリカにおける近代国家形成と資本主義化の過程を、先住民・黒人・少数民族・女性など《周辺》に生きる人々の文化変容や民衆思想の生成との複雑な緊張関係から把え直し、刺激的な著書・論稿を数多く著されています。

 今回の大会はテーマはひとつ、そして午後、13時から17時半までの時間を通して、報告とコメント、討論が実施されます。ふるってご参加いただき、ぜひフロアーをあげて活発な議論ができればと思います。


大会テーマ「同時代日本への歴史的接近」

日時
2007年12月2日(日曜日)
11時から12時まで 総会
12時30分受付開始、13時開会、17時30分終了
会場
慶應義塾大学三田キャンパス 北館2階ホール
三田キャンパスマップ(http://www.keio.ac.jp/access/mita.html)1番の建物
報告
渡辺治氏(一橋大学)「同時代日本社会の歴史的位置をさぐる」
野村正實氏(東北大学)「会社とは何か――雇用の歴史から考える」
コメント
中西新太郎氏(横浜市立大学)
崎山政毅氏(立命館大学)
司会
有山輝雄氏(東京経済大学)
植村秀樹氏(流通経済大学)
原山浩介氏(国立歴史民族博物館)
懇親会
18時~

慶應義塾大学アクセス・キャンパスマップ三田キャンパス