2016年度大会「現代日本におけるナショナリズムの歴史的位相」

日時
2016年12月3日(土)10:00~17:30(9:30受付開始)
会場
首都大学東京南大沢キャンパス(最寄り駅:京王相模原線南大沢駅)6号館
全体会:「現代日本におけるナショナリズムの歴史的位相」(13:30~)
  • 平井一臣(鹿児島大学教授)
    「現代日本の社会運動とイデオロギー ―1968年を起点として」
  • サーラ・スヴェン(上智大学准教授)
    「21世紀の反知性主義の諸相 ―アメリカ、日本、ドイツ等における歴史修正主義、排外主義、非国民論の相互関係」
  • 木下ちがや(工学院大学非常勤講師)
    「複合震災から日本社会の再編へ ―危機のもとでの国家、ナショナリズム、対抗運動」
自由論題報告(10:00~)
  • 瀬畑源「国会開会式と天皇――帝国憲法と日本国憲法の連続と断絶」
  • 鄭永寿「解放直後在日朝鮮人運動における「関東大虐殺事件」の責任追及(1945-49)」
  • 木村智哉「邦画産業斜陽期における大手映画会社経営方針の転換とその影響――東映株式会社の事例を中心に」
  • 謝花直美「占領那覇の空間編成――市民帰還が描く「復興」の軌跡」
  • 西井麻里奈「廃虚と描線――陳情書から読み解く、「平和都市」広島の復興都市計画と土地区画整理事業」

※13:00~13:30まで総会を開催します。ご参加下さい。

※大会終了後、懇親会を予定しております。

資料代:500円

※南大沢駅改札を出て右にまっすぐ歩いていくと両側にアウトレットモールなどが広がり、真正面に校舎が見えます。門を入っていちょう並木のあいだを通ってまっすぐ歩き、本部棟建物の下をくぐって奥の左手に6号館があります。門を入ったら、とにかくまっすぐ歩いて下さい。駅から校舎まで6~7分程度です。

趣旨文

 近年、欧米においては過激な排外主義が高揚し、極右政党の躍進が顕著となっている。これはISによるテロ攻撃の多発や、難民・移民問題などが背景にある。日本では現在までのところ、これらの問題は大きな政治的争点とはなっておらず、極右政党の躍進もみられない。しかし歴史修正主義がかつてない高揚をみせ、一部ではヘイトスピーチにみられるような極端な排外主義が台頭しつつあることも無視することはできない。また伝統主義的な右翼団体である日本会議が、政府や議会の中で影響力を拡大しつつある。他方では、経済的格差・貧困の問題が深刻な社会現象となっていることも、これらと密接に関わっている。以上をふまえて、本企画は、現代日本のナショナリズムの歴史的位相を明らかにすることを課題としている。

 その際、1.難民・移民の問題などに直面する諸外国との国際比較の観点から議論したい。日本と欧米諸国での排外主義の現れ方は異なるものの、グローバル化への反動という側面や、反知性主義的傾向など共通点が指摘できるであろう。よってグローバル化を推進する新自由主義とナショナリズムの関係を、ポピュリズムの問題とも関連づけて考察することが必要である。
また、2.特に近年の日本会議などの運動が「草の根」の形をとっていることに注目する。これは、新自由主義的改革による地域社会の疲弊という状況とも関連するが、右派の運動の分析が不可欠となる。さらに3.ヘイトスピーチの問題についても、その現状と特質を明らかにしていきたい。最後に、4.以上の排外主義の動向に対抗的な運動、あるいは安保法制に反対する青年の新しい動きについても議論する。2から4のいずれにおいても、社会運動の歴史的分析という視点を重視していきたい。

自由論題報告者・報告要旨(応募順)

名前:
瀬畑 源(せばた・はじめ)
所属:
長野県短期大学助教
報告題:
国会開会式と天皇――帝国憲法と日本国憲法の連続と断絶
要旨:
 日本国憲法において、天皇は国事行為として「国会を召集する」。開会式は衆院議長が主宰しており、天皇の出席と「お言葉」は「公的行為」とされている。帝国憲法時代の開院式は天皇が主宰し、式後でないと議事が行われなかった。現在の開会式は会期のいずれかに行うこととされており、ただのセレモニーに過ぎない。
 しかし、日本国憲法施行後、最初の開会式が行われる際、天皇の出席や勅語の「下賜」を引き続き求めたのは国会の側であった。国会は国権の最高機関として位置づけられる以上、天皇が開会式に行幸して儀式を荘厳にすることが必要とされ、共産党すら出席に反対しなかった。そのため、一連の儀式に違和感を抱えていた松本治一郎参院副議長が、第2回開会式で天皇への拝謁を拒否する事件に繋がっていく。
 帝国憲法下と日本国憲法下での開院式・開会式の違いに着目し、「象徴」としての天皇をどのように議員達が理解しようとしていたのかを考察する。
名前:
鄭 永寿(ちょん・よんす)
所属:
東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程
報告題:
解放直後在日朝鮮人運動における「関東大虐殺事件」の責任追及(1945-49)
要旨:
 本報告では、朝鮮解放から1949年までの在日朝鮮人による関東大震災朝鮮人虐殺に関わる運動を再構成し、虐殺責任追及の性格を検討する。
 植民地期においてかかる活動は治安当局によって封殺され、また関東大震災以降の各災害や空襲、敗戦下でも大震災以来の「暴動」説に根付いた流言蜚語と殺傷事件が繰り返されたことによって、朝鮮人の虐殺からの/への恐怖は払拭されえなかった。このような背景の中、解放直後に真相究明・責任追及の運動が、新朝鮮建設、生活の安定を期するなかで活発化したのである。
 報告では、朝鮮人団体の関連の動向を広く見渡しつつ、特に、生活権侵害に抗する形で運動を推進した在日本朝鮮人連盟による軍閥責任論に注目し、南朝鮮における朝連ソウル委員会の追悼会や各言論を、民主主義民族戦線の新朝鮮建設路線の観点からあわせて検討することによって、軍閥責任論がもつ歴史的特質を明らかにしたい。
名前:
木村 智哉
所属:
明治学院大学非常勤講師
報告題:
邦画産業斜陽期における大手映画会社経営方針の転換とその影響――東映株式会社の事例を中心に
要旨:
 日本の映画産業は1960年代から斜陽期に入り、以降段階的に、国内大手企業の量産による邦画市場寡占の構造が崩れていく。この過程における邦画の変容が論じられる際、観客動向を踏まえた社会文化論的なアプローチにせよ、作家や作品を主たる対象とするテクスト論的な議論にせよ、かつて映画の量産体制を支えた大手企業の動向は、その主たる関心の対象から外れがちであった。しかし、大規模な撮影所や人員を抱えてきた既存の企業が邦画市場の縮小期に試みた、体質変化のための様々な施策とその結果には、前述のような研究が論じてきた映画文化の変容を、産業史的な視点から、より顕著に見ることができる。本報告ではその中でも特に、映画の製作基盤たる撮影所の、企業組織上の分離を完全には行わなかった東映株式会社の、70年代後半から80年代半ばまでの事例を中心に、その経営方針の転換が制作現場と作品のあり方にもたらした結果を検証する。
名前:
謝花 直美
所属:
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程
報告題:
占領那覇の空間編成――市民帰還が描く「復興」の軌跡
要旨:
 沖縄戦後1946年11月、糸満区壺屋(現那覇市)へ壺屋の陶工と瓦工が産業先遣隊として移動を許可された。同様に垣花出身者が「みなと村」へ、羽地村にいた那覇出身者が浄水場復旧作業隊として真和志村(現那覇市)に帰還した。ほとんどが米軍用地となっていた占領初期の那覇市及び近隣へ帰還するために、「復興」や軍作業という労働に関わることが、道を開いたと言えるだろう。しかし、多くの者は帰還を果たすことが出来ず、1950年時点で、沖縄内の疎開先や収容地区に残留したままの那覇出身者は約3万人いた。那覇市「復興」は、土地開放や闇市による商業の再開が語りの中心を占めてきたが、戦後5年を経た残留者の存在は、その「復興」の語りが、人々の「復興」という視点を欠落させてきたことを示している。米軍占領に生を規定された人々の経験が那覇の空間をいかに編成していたかを考察する。
名前:
西井 麻里奈
所属:
大阪大学大学院博士後期課程
報告題:
廃虚と描線――陳情書から読み解く、「平和都市」広島の復興都市計画と土地区画整理事業
要旨:
 広島の戦後史に関する諸研究は、近年増加傾向にある。その中で、「復興」に関する言及はこれまで、「平和都市」としての都市計画を牽引し意味づけるメディア・イベントに注目して展開されてきた。しかし、原爆によって壊滅した広島における、屋根のある暮らしの再建の具体像に関する研究は、進んでいない。特に、戦後都市計画のなかでの土地の処遇と住宅の再建について明らかにすることは、重要な課題である。「平和都市」として喧伝される戦後復興のなかで、人びとの暮らしの再建はどのように、また如何なる情動や権力関係を伴って行われてきたのか。本報告はこの課題に迫るため、敗戦~1950年代中盤までを対象に、戦後広島の土地問題に焦点を当てる。主な資料は人びとが区画整理事業に際して行政に提出した陳情書であり、その分析を通じて「平和都市」建設としての都市の卓越化を逆照射することを試みる。