2017年12月9日(土) | |
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13:30~ | 受付開始 |
14:30~16:30 | 国立歴史民俗博物館企画展示「「1968年」―無数の問いの噴出の時代―」展示見学 |
16:30~17:20 | 展示評・意見交換 |
17:30~19:30 | 懇親会 |
2017年12月10日(日) | |
9:30~ | 受付開始 |
10:00~10:30 | 総会 |
10:40~12:40 | 自由論題報告 |
13:30~17:00 | 全体会 |
「1968年」に象徴される「若者たちの反乱」については、近年、その国際的な共時性がますます注目されている。共時性の背景には、ベビー・ブーマーたちの存在、工業化の進展による労働現場での疎外、大衆消費社会の成立、大規模な人口移動によるコミュニティの変質といった(第二次世界大戦後の)「戦後」的要因があった。したがって、その範囲は日本を含むいわゆる西側先進諸国だけでなく、冷戦の壁を越えて東側にも、さらにはアジア・アフリカ・ラテンアメリカにも及んでいた(油井大三郎編『越境する1960年代』彩流社、2012年、西田慎・梅崎透編『グローバル・ヒストリーとしての「1968年」』ミネルヴァ書房、2015年、等)。
もちろん、そのような世界各地の運動は、ほとんどが「失敗」したとされていることも共通している。だが「失敗」とはいえ、緑の党を生むに至ったドイツや、ベトナム戦争への徴兵を忌避したクリントン、非白人のオバマを大統領として輩出した米国など、欧米諸国では運動の積極的意義が制度的に定着したこともあり、「1968年」の歴史的位置づけをめぐっては豊富な研究蓄積がある。
これに対して日本では、一部の先鋭化した運動の自壊作用が強調され、若者たちの運動は否定的に評価される傾向が根強い。だが同時期には他方で、住民運動・市民運動と呼ばれる多様な運動が簇生し、地域社会に少なくない影響を与えてきた。このように分岐する諸現象について、その背後にある社会変動も含めた包括的な説明は、なお充分とは言えない。
社会運動を正面に据えた荒川章二氏による戦後史通史(『豊かさへの渇望』小学館、2009年)や、小熊英二氏の浩瀚な『1968』(新曜社、2009年)などが著された後も、1960年代後半の諸運動に関する学問的・実証的な検討は依然低調であり、目立った機運はない。また政権交代という明確な成果が得られず、自民党一党支配が継続したことにも規定されて、社会体制の変容と諸運動との連関をめぐる説得的な語りは生み出されていない。とりわけ日本では、当時の諸運動が大衆消費社会や組織資本主義の確立に対抗する文化的な質を(他地域と同様に)持っていたにもかかわらず、全体としては企業間競争と労働者間競争を基礎とする「企業社会」に収斂してしまったことの意味を考えなければならない。この点は、当時の運動が有する積極的な側面に着目してきた欧米諸国の研究動向にも、近年、大きな変化が見られることとも関連する。
このような動向をふまえるならば、60年代後半の運動とその思潮が70年代以降の社会変動をどのように規定したのか。変動のなかで提起され、実現された/され損ねた課題を問い直す必要がある。この「実現」のなかには、運動主体の営みのみならず、「反乱」に対抗して生じた右派・保守の運動や、国家・企業の編成替えそのものも含めて考えねばならない。その際、当時の運動が志向した反国家主義や、労働市場における人種や性別の平等を求めた動きが、その後の世界を席巻する「新自由主義」といかなる関係を取り結んだのかを問うような、射程の長い視角も必要となる。“68年以後”を見据えて、あの運動をマクロな連関に位置づける試み、いわば「1968年」が有する歴史的射程の測り直しが求められているといえよう。
そこで本年度大会では、「1968年」にひとつの焦点を結ぶ多様な運動が、日本社会に与えた影響とその歴史的位置づけについて、あらためて議論してみたい。
第一に、1968~69年の諸運動がその後の社会変容に与えた作用について、今日の視点に立った再検討を進めたい。安藤丈将氏は、著書『ニューレフト運動と市民社会:「六〇年代」の思想のゆくえ』(世界思想社、2013年)において、世界的な連関を有するニューレフト運動の本質を「生き方の見直し」と捉える。ではそのような運動は、70年代以降の日本社会にいかなる影響を及ぼしたのか。安藤氏には、国家の対応の変化、具体的には警察と運動との攻防を軸にして、運動から生まれた「遺産」についてご報告いただく。
第二に、今日、国際社会で依然として強力なイデオロギーたる新自由主義と、1968~69年の運動の関係を問うてみたい。菊池信輝氏は、著書『日本型新自由主義とは何か:占領期改革からアベノミクスまで』(岩波書店、2016年)において、日本の新自由主義の特徴を、革新陣営まで含めた反国家主義・反介入主義の広範な存在に求めている。菊池氏にはそのような視点から、ニューレフト運動を中心とする当時の社会運動と新自由主義との関係について、あらためて整理してもらうことで、問題提起をいただく。
無論、今回の主題であれば、関連する文化面での変容や地域ごとの差異、国際的な連関など、多様な論点がありうる。今回の大会は、さしあたりそのような広がりをもつ議論の出発点と位置づけたい。本年度の大会がそのような試みの始まりとなるよう、当日の活発な議論を期待したい。