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10月

同時代史学会2023年度大会 趣旨文・報告要旨

【趣旨文】

 本年度は1973年に水俣病第1次訴訟の熊本地裁判決が出て50年の節目にあたる。そこで、同時代史学会では、「安定化させる力学とかき消されていく声ー1973年以降の水俣から考えるー」と題して大会企画を組んだ。

 2002年に設立された同時代史学会では、すでに2008年に「消費からみる同時代史」と題して、高度経済成長期の消費生活と公害問題のあり方について論じた。また、本年度5月に開催された歴史学研究会の現代史部会では、「社会運動と環境・民主主義― 新自由主義時代の民衆像を求めて―」と題する企画が組まれている。他方、1990年代から活動を続けている水俣フォーラムがこの秋「水俣・福岡展2023」を開催したほか、今月は2013年に発足した「公害資料館ネットワーク」のシンポジウムも予定されている。

 これらをふまえ、本企画では熊本地裁判決後の「水俣」について、被害者やその家族のその後の「生」のリアルや地域社会の実像をていねいに拾いながら、「かき消されていく声」を考察したいと考えた。その含意は以下の通りである。

 ある段階で社会的に喚起されたり再喚起されたりする問題は、そのつど「安定化」させる力学にさらされ、さまざまな現場の「声」がかき消されていく。今日の原発問題をはじめ、戦争や震災からの「復興」といった過程にも、同様の現象が見られるだろう。この「安定化」に関わる動きは多元的で複合的である。加害企業や行政による動きもあれば、メディアや一般的な世論の動きもある。地域社会内部でのさまざまな人間関係によってもそれはもたらされるだろう。大量消費社会や新自由主義によって痩せ細っていく公共圏の問題もある。アカデミズムや教育現場の関与も否定できない。

 1950年代に「奇病」として顕在化した水俣病は、1959年に新日本窒素肥料株式会社(以下チッソ)の工場排水による有機水銀中毒であることが熊本大学医学部の研究班によって特定されたが、行政やチッソの妨害などから被害者の訴えは封印された。1960年代後半に全国的に反公害の機運が高まるなか、1973年の熊本地裁判決によりチッソの加害責任が確定するが、それ以後も、補償協定をめぐる直接交渉が行われたほか、環境庁(当時)の定めた認定基準をめぐる未認定患者の問題は現在も係争中である(9月27日 大阪地裁判決)。その間、「水俣病関西訴訟」で国や県の行政責任が問われるなか(2004年10月15日最高裁判決)、国家による「和解」や「救済」にむけた取り組みがある一方で、水俣では市民同士の分断を修復する「もやい直し」の試みが1990年代以降取り組まれてきた。

 そうしたなかで水俣のローカルな現状は、ともすると美化され神話化される。その傾向は、アカデミズムの良心的な研究活動にも内在しうるし、「水俣を教える」という場面においても、無視できない傾向としてあるだろう。過去の問題を現在の問題に直結させて考える「非歴史的思考」の陥穽もある。リアルな(そして歴史的な)「人間」の存在がともすれば軽視されるこれらの傾向に対して、私たちはまず、生身で等身大の「水俣」が1973年以降も存在するという当たり前の事実を再確認したいと思う。そこには、被害者同士の軋轢や葛藤も当然含まれよう。そうしたローカルな視点を見失うことで、「安定化」させる力学に対して私たちは無防備となる。今回の大会では、被害者や地域社会の実像を美化することなく提示し、「かき消される声」や「安定化する力学」の具体像を1973~1990年代を軸に検討したいと思う。

 そこでまず井上ゆかり氏には、「一次訴訟判決後から現在までの水俣病被害当事者の『かき消されゆく声』」と題して、1973年以降の「かき消されていく声」の実状を、女島の漁民やチッソ労働者の視点、また現在の胎児性世代の訴訟や認定されない被害当事者の状況などを中心に紹介していただく。これまで多くの患者さんに接してこられ、「人間の営みを中心とした理論形成」を志してこられた井上氏に、さまざまな立場をふまえた生のリアルを見据え、「安定化」させる力学にさらされた現場の視点から問題提起していただく。

 また、原子栄一郎氏には、「水俣病を環境教育として取り上げることにおいて、緒方正人さんを考材とすることによって何がもたらされるか? 私の大学環境教育実践から」と題して、ご自身が経験された研究上の転回をふまえ、「チッソは私だ」という緒方正人さんの「魂」の視点から論じてもらう。緒方さんの視点は、加害企業や行政を免罪しかねない危険性があるものの、その視点を抜きにした社会批判もまた表面的なものになりかねない。水俣病事件を環境教育として取り上げるさい、その視点をいかに活かしたらよいか。ご提案いただければと思う。

 これら2つの報告をふまえ、患者支援団体である水俣病センター相思社の元職員・遠藤邦夫氏には、本企画担当者である及川英二郎との「対談」を通して、主に「もやい直し」に至る経緯やその歴史的意義について、「集合的トラウマ」の両義的側面などに着目しながら論じていただく。活動家として、また支援者として関わってこられたご経験をふまえ、社会運動のあり方やその限界について論点を提示していただければと思う。

 「安定化」させる力学がいまもなお作動ししつづけるなか、水俣が発信する問いは何か、それはどのようにして受け止められるべきか。「水俣」を論ずるさい、「公害」一般のなかでそれを普遍的に思考する視点とともに、その固有性を注視し、個々の「人間」に立脚点を見出しながら、「公害」だけではない他の諸問題とリンクさせて思考する視点が同時に求められよう。これら2つの視点は、せめぎ合い、かつ共存することで、より生産的な知見が得られるはずである。フロアからの積極的な参加を期待したい。

報告1:井上ゆかり(熊本学園大学水俣学研究センター)

「一次訴訟判決後から現在までの水俣病被害当事者の『かき消されゆく声』」

 1973年の水俣病第一次訴訟判決から今年50年を迎えた。この判決では加害責任と一時金の賠償命令のみであったため、患者がチッソと直接交渉し現在の補償協定内容になった。翌年には認定申請患者協議会が結成され、いわゆる未認定患者総申請運動が始まり、係争課題は加害責任追及から水俣病かどうかに変わっていった。こうしたなかで幾度も被害当事者は声を上げ続け勝訴し、結果として国は1996年の水俣病総合対策医療事業から2005年、2009年と3度「チッソとの紛争状態の終結」として「行政責任は今後追及しない」ことを条件に和解施策をとってきた。しかし、この和解は必ずしも被害当事者側が望んだ形ではなかった。

 2023年9月27日に水俣病不知火患者会近畿訴訟大阪地裁判決で原告全員を水俣病と認める司法判断が下された。同訴訟の熊本や東京での判決も控え、さらには第二世代訴訟、また新潟の二次訴訟も続いている。事態が長期化するのは、 訴訟で原告が勝訴すれば潜在していた被害当事者が新たな認定申請者として増加するという状況が50年も続き、その反面、地元ではこれまでの和解が「水俣病ではないのに一時金を貰っている」という地域内での差別を生み出し、申請が抑制されていたからにほかならない。

 一方、水俣市議会の議会運営委員会は2019年に水俣病問題を審議する「公害環境対策特別委員会」の名称から「公害」を外す議案を可決し、2023年百間排水口の樋門撤去工事が突如発覚し被害者団体の抗議行動が起こった。水俣市長は「ここまで注目されるという認識はなかった。」と地元新聞の取材に答えている。 権力が公害への強い圧力を示す水俣において、被害当事者が声を上げ続けることは、その声をかき消そうとする圧力との闘いでもあった。一次訴訟原告は「人間としての復権」、いまの第二世代訴訟原告は「胎児性世代、不知火海沿岸住民を代表する闘い」だと表現する。

 この報告では、故原田正純らと地域に入り調査研究をすすめてきた経験を踏まえ、漁民やチッソ労働者らの現状と「かき消す」力とは何か、さらに研究者としての中立とは何か考えてみたい。

参考:井上ゆかり『生き続ける水俣病:漁村の社会学・医学的実証研究』(藤原書店、2020年)

報告2 原子栄一郎(東京学芸大学環境教育研究センター)

「水俣病を環境教育として取り上げることにおいて、緒方正人さんを考材とすることによって何がもたらされるか? 私の大学環境教育実践から」

 現代環境教育の世界標準は、ESD(持続可能な開発のための教育)である。その根本課題は、「持続不可能な社会を支えている教育を考え直し、その向きを変えること」である。環境教育を担う者にとって、これは避けて通ることができない課題である。

 報告では、私の大学環境教育実践の試みを紹介する。実践では、教育にかかわる一人ひとりが自分を棚上げにしないで、自分のこととして根本課題を受け止め、<この私>はどこから来たのか、<この私>は何者か、<この私>はどこへ行くのかを、自分を振り返り、よく吟味し考えてみることを基本方針としている。このもとに、持続不可能な社会を象徴する水俣病を取り上げて、「一人の人間」として、いろいろな立場から水俣病に深く長くかかわった人(たち)に着目し、その人(たち)に関する文字資料を読み、映像資料がある場合には視聴して、その過程で<この私>は何をどのように感じたり、思ったり、考えたりしたか、自分の心の消息を綴り、クラスメートと共有し議論するワークを行っている。

 緒方正人さんは、このシリーズ「水俣病から考える」ワークの中で扱う「一人の人間」である。

 報告では、大学環境教育実践の概要を紹介した後、緒方さんの「魂のゆくえ」(栗原彬編『証言 水俣病』岩波書店、2000年)をテキストにして彼の来歴をたどる。その際、来歴の中に見て取ることができる「転生」と呼びうるような生の質的転換、特に「魂」の境地への到達と、それを引き起こした出来事や事情に注目する。その上で、2000年代半ばに研究上の「自己分裂」を引き起こしていた私に与えたインパクトを含め、水俣病を手掛かりにして現代環境教育の根本課題に取り組むことにおいて、緒方さんを考材とすることによって何がもたらされるか、現代環境教育の根本課題、人間として生きる、水俣病のとらえ方、環境教育のパラダイムなどとのかかわりでお話ししたいと思う。

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10月

同時代史学会2023年度大会(第一報)

同時代史学会2023年度大会(第一報)

 同時代史学会2023年度大会を、下記のスケジュール・テーマで開催します。

 詳報は改めてお知らせします。

12月9日(土) 

会場:東京経済大学

10:00〜12:00 自由論題報告(対面のみ)

12:40〜13:10 総会 (オンラインによる中継を予定)

13:30〜17:40 全体会(オンラインによる中継を予定)

「安定化させる力学とかき消されていく声―1973年以降の水俣から考える―」

井上ゆかり( 熊本学園大学水俣学研究センター 研究員 )

原子栄一郎( 東京学芸大学環境教育研究センター 教員 )

遠藤邦夫 ( 水俣病センター相思社 元職員 )

18:00〜   懇親会

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7月

同時代史学会2023年度大会 自由論題報告者の募集

 同時代史学会2023年度大会 自由論題報告者の募集

今年度の同時代史学会年次大会は、本年12月9日(土)、東京経済大学(東京都国分寺市)にて開催の予定です。つきましては、当日午前中に実施される自由論題報告の報告者を募集します。日頃の研鑽を発表し合い、議論を交わせる貴重な機会です。会員の皆様には、ぜひ奮ってご応募くださいますよう、お願い申し上げます。

なお、機材や運営上の観点から、本年度の自由論題については原則、対面開催となります。この点、ご承知おきください。

1.日時:2023年12月9日(土) 午前10時開始(最大13時20分終了予定)

  *御一人の持ち時間は報告40分+討論20分=計1時間を想定してください。

2.場所:東京経済大学 国分寺キャンパス 2号館

*アクセス:https://www.tku.ac.jp/access/kokubunji/index.html

*キャンパスマップ: https://www.tku.ac.jp/campus/institution/kokubunji/

3.開催形態:対面開催

4.論題:第二次世界大戦以後を主な対象とする歴史的研究全般

5.エントリー資格:同時代史学会会員であること

  *非会員で応募される方は、エントリーと同時に入会手続きをお済ませください。

   参照・本会HP「入会のご案内」: http://www.doujidaishi.org/about/admission.html

6.エントリー方法:以下の項目を、電子メールか郵送で、下記9までお知らせください。

① 報告者氏名、及び現在の所属

② 報告タイトル

③ 報告要旨(400字以内)

7.採否:理事会で審査の上、9月末日までに応募者本人に直接採否を通知します。

8.締切:2023年8月31日(木)必着

9.応募及び問い合わせ先:戸邉秀明(自由論題担当理事・東京経済大学教員)

E-mail:tobe ★ tku.ac.jp

  〒185-8502 東京都国分寺市南町1-7-34 東京経済大学 戸邉秀明 宛

*郵送の場合、封筒に「同時代史学会自由論題応募」と書き添えてください。

以上

5
6月

第35回関西研究会のお知らせ

みなさま

平素は本会の活動をご支援いただき、まことにありがとうございます。
さて、同時代史学会・第35回関西研究会ですが、下記のようにハイブリッドで開催いたします。 


みなさまお誘い合わせのうえ、よろしくご参加のほど、お願いいたします。
オンラインでの参加希望の方は、下記のURLにて登録下さい。対面での参加希望の方は、直接会場までお越し下さい。
====
同時代史学会・第35回関西研究会
〈報告者〉
富永京子氏(立命館大学産業社会学部准教授)「1970-80年代の若者文化と政治関心:本当に「無関心」と「冷笑」の時代だったのか?」
参考文献:北田暁大,2005『嗤う日本のナショナリズム』NHK出版.
     片瀬一男,2015『若者の戦後史』ミネルヴァ出版.
                 歴史学研究会日本史研究会編,1985『講座 
日本歴史12(現代2)』東京大学出版会
日時:2023年7月1日(土)14:00~17:00
場所:キャンパスプラザ京都6階第5講習室(JR京都駅徒歩5分)
      https://www.consortium.or.jp/about-cp-kyoto/access
登録:https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZcsd-yhrjwoG9zlTmkIZpRjRp_sagY3V6kd
 登録後、研究会参加に関する情報の確認メールが届きます。
   参加希望の方は前日の6月30日(金)までに申込みください!
参加費:無料(会員外の方にもお声をおかけ下さい)

配信担当:河西秀哉
24
5月

第51回定例研究会のお知らせ

第51回定例研究会のお知らせ

■ 同時代史学会・第51回定例研究会

院生・若手修士論文報告会(*今回より対面にて開催致します)

〈報告〉
・蒲原まゆみ氏(軽井沢歴史民俗資料館・学芸員)
「『銃後』における旅館と地域社会―学童集団疎開の受け入れの視点から― 」
(開始予定時刻13時30)
・荻 健瑠氏(法政大学大学院 政治学研究科 博士後期課程)
「日本社会党と〈文民統制〉―再軍備問題から四次防先取り問題までを中心に―」
(開始予定時刻14時55分)
・小口晃平氏(立教大学法学研究科博士課程前期課程修了)
「西銘順治県政期における在沖自衛隊をめぐる政治――1978~1990――」
(開始予定時刻16時15分)

日時:2023年7月8日(土)13:30~17:30
会場:法政大学市ヶ谷キャンパス大内山校舎 Y702教室
https://www.hosei.ac.jp/ichigaya/gaiyo/shisetsu/outiyama/?auth=9abbb458a78210eb174f4bdd385bcf54
参加費:無料(会員外の方にもお声をおかけ下さい)

連絡先:〒402-8555 山梨県都留市田原3-8-1
    都留文科大学文学部 比較文化学科 菊池信輝研究室
E-mail: n-kikuti ★ tsuru.ac.jp (★を@に置き換えてください)

(2023年7月7日更新)

22
5月

訂正:【告知】『同時代史研究』第17号の投稿原稿の募集について

訂正

「【告知】『同時代史研究』第17号の投稿原稿の募集について 」中、日付の曜日に誤りがありましたので、訂正いたします。

誤 2023年7月31日(日)  正 2023年7月31日(月)誤 

2023年10月20日(木)  正 2023年10月20日(金)

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【告知】『同時代史研究』第17号の投稿原稿の募集について _

同時代史学会編集委員会 _

『同時代史研究』第17号(2024年9月刊予定)の投稿原稿を募集いたします。 

奮ってご投稿くださいますよう、お願い申し上げます。 

投稿規定、審査規定、執筆要領については、同時代史学会のホームページをご覧ください。 

http://www.doujidaishi.org/journal/journal_rules.html

スケジュール・投稿手続きは下記のとおりです。 

2023年7月31日(月) 投稿原稿のエントリー締め切り 

・投稿をご希望される方は、電子メールで編集委員会宛に、名前・所属・原稿種別・題名をご連絡ください。 

アドレス:journal●doujidaishi.org (「●」を「@」にかえて下さい) 

・投稿原稿を提出する段階で、題名を若干修正することは認められます。 

・1週間以内に返信いたしますので、万が一到着しない場合には、必ずお問い合わせください。 

・会員以外の方は投稿できませんので、ご注意ください。 

なお、入会手続きはこちらをご覧ください

http://www.doujidaishi.org/about/admission.html

2023年10月20日(金) 投稿原稿・要旨提出の締め切り 

・原稿と要旨(800字程度)を、1部ずつ提出してください。 

・送付先は以下の通りです。封筒表紙に「同時代史学会学会誌原稿在中」と朱書きして下さい。当日の消印まで有効です。

〒169-8050東京都新宿区西早稲田1−6−1 早稲田大学国際教養学部  岡本公一  

・あわせて締め切りまでに、原稿・要旨[原則として Word(.docx あるいは .doc)]を、編集委員会宛に電子メール添付にてご送付ください。 

・原則として投稿後3ヶ月以内に審査結果をお伝えします。掲載決定後は掲載決定証明書を発行できますので、ご相談ください。 

・お送りいただいた原稿・電子ファイルは、厳重に管理し、査読後はこちらで破棄いたします。 

・エントリー後に投稿を辞退される場合も、ご連絡をお願いします。 

2024年1月 審査結果通知(予定) _

2024年9月 刊行(予定) 

投稿について、ご不明の点やご相談などがありましたら、電子メールで編集委員会(下記アドレス)へ問い合わせください。 

同時代史学会編集委員会  journal●doujidaishi.org (「●」を「@」にかえて下さい)

20
5月

【告知】『同時代史研究』第17号の投稿原稿の募集について

【告知】『同時代史研究』第17号の投稿原稿の募集について _

同時代史学会編集委員会 _

『同時代史研究』第17号(2024年9月刊予定)の投稿原稿を募集いたします。 

奮ってご投稿くださいますよう、お願い申し上げます。 

投稿規定、審査規定、執筆要領については、同時代史学会のホームページをご覧ください。 

http://www.doujidaishi.org/journal/journal_rules.html

スケジュール・投稿手続きは下記のとおりです。 

2023年7月31日(日) 投稿原稿のエントリー締め切り 

・投稿をご希望される方は、電子メールで編集委員会宛に、名前・所属・原稿種別・題名をご連絡ください。 

アドレス:journal●doujidaishi.org (「●」を「@」にかえて下さい) 

・投稿原稿を提出する段階で、題名を若干修正することは認められます。 

・1週間以内に返信いたしますので、万が一到着しない場合には、必ずお問い合わせください。 

・会員以外の方は投稿できませんので、ご注意ください。 

なお、入会手続きはこちらをご覧ください

http://www.doujidaishi.org/about/admission.html

2023年10月20日(木) 投稿原稿・要旨提出の締め切り 

・原稿と要旨(800字程度)を、1部ずつ提出してください。 

・送付先は以下の通りです。封筒表紙に「同時代史学会学会誌原稿在中」と朱書きして下さい。当日の消印まで有効です。

〒169-8050東京都新宿区西早稲田1−6−1 早稲田大学国際教養学部  岡本公一  

・あわせて締め切りまでに、原稿・要旨[原則として Word(.docx あるいは .doc)]を、編集委員会宛に電子メール添付にてご送付ください。 

・原則として投稿後3ヶ月以内に審査結果をお伝えします。掲載決定後は掲載決定証明書を発行できますので、ご相談ください。 

・お送りいただいた原稿・電子ファイルは、厳重に管理し、査読後はこちらで破棄いたします。 

・エントリー後に投稿を辞退される場合も、ご連絡をお願いします。 

2024年1月 審査結果通知(予定) _

2024年9月 刊行(予定) 

投稿について、ご不明の点やご相談などがありましたら、電子メールで編集委員会(下記アドレス)へ問い合わせください。 

同時代史学会編集委員会  journal●doujidaishi.org (「●」を「@」にかえて下さい)

20
2月

同時代史学会・第34回関西研究会

みなさま

平素は本会の活動をご支援いただき、まことにありがとうございます。
さて、同時代史学会・第34回関西研究会ですが、下記のようにオンラインにて開催いたします。
みなさまお誘い合わせのうえ、よろしくご参加のほど、お願いいたします。

====
同時代史学会・第34回関西研究会
〈報告者〉
北村毅氏(大阪大学大学院人文学研究科准教授)「日本の戦後処理再考――援護行政における「行方不明者」の不明について」(仮)
日時:2023年3月10日(金)14:00~17:00
https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZUkd--rrDgiH9Cq0keEoylGcUe17DZueIpQ  
 登録後、研究会参加に関する情報の確認メールが届きます。
参加費:無料(会員外の方にもお声をおかけ下さい)

配信担当:河西秀哉
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11月

同時代史学会・2022年度大会 全体会報告要旨

全体会 「70年代の国際関係の変動の歴史的意義を考える」

【趣旨文】

 今年は沖縄返還、日中国交回復から50年という節目の年である。だがこれは独り日本という国に生じた特殊なエピソードというわけではない。そこには、1960年代半ばから米国が本格的に介入した冷戦の熱戦化の典型であるベトナム戦争や、それに端を発した反戦運動の興隆の影響があったことは明らかである。さらに、その背景には、いわゆる「1968」に象徴されるフェミニズムや労働疎外などに取り組む若者中心の広範な社会運動と、それを受けた各国の政治的動揺があった。

 同時に、国際関係そのものにも地殻変動が起き始めていた。西側諸国との経済・軍拡競争に疲弊したソ連・東欧圏の西側への接近と、それに端を発した中華人民共和国の立場の変化、「第三世界」勢力の登場と異議申し立てのインパクト等。新たな状況によって、第二次世界大戦の勝者たちが形成した戦後秩序にそもそも伴っていた妥協的側面の限界が露呈したことも、1970年代の変動の、より大きな背景を形成していた。1972年の2つの出来事は、その日本的な現れに他ならなかった。

 1970年代を1つの大きな時代の転換点とみる試みは、当然のことながらこれまでにも多数試みられている。同時代史学会でも、すでに2010年度大会「転形期―1968年以後」において、1960年代から80年代を1つの長い転換期と見立て、諸運動の転換とその意味を検討した。2017年度大会では歴史民俗博物館の企画展示と合わせ、「「1968年」を測り直す―運動と社会の連関、その歴史的射程」と題して、地球規模の共時性を持つ1968~69年の若者たちの運動の歴史的意義をあらためて掘り下げた。また2014年度の「『復帰』後の沖縄を歴史化する」では、沖縄に焦点を絞る形で、1972年以後の変動が持つ意味を再検討した。

 このような検討が進めば進むほど、1970年代の転換は、その後にどう活かされたのかという問いが浮上してくる。冷戦終焉直後の1990年代初頭には、それまでの運動の蓄積が戦争責任・植民地支配責任の問題などで多大な成果をもたらしたにも関わらず、その後、歴史修正主義と新自由主義に席巻されてしまったのはなぜか。この点についても、当会では2018年度大会で「転換期としての1990年代」と題して1990年代の歴史化を始め、2019年度大会「〈戦争の記憶〉をめぐる同時代史―歴史表現はどう向きあってきたか」では、90年代の遺産の前提にある、1970~80年代のさまざまな試みについて、表現方法の観点から検討を加えた。

 今年度はこれらの成果をふまえつつ、次のような視点で、議論をさらに展開していきたい。先に述べた、60年代後半に始まる国際的な文脈を、日本はどのように受けとめたのか。この点を、従来のように日米・日中といった大国間関係のなかだけで捉えるのではなく、新たな「国際関係」の視点を探ることで、重層的に理解する道を拓きたい。1970年代の日本において、その焦点のひとつはアジアといかに向き合ったかに絞られるが、それを今日、どの側面で捉え究明するのかが、同時代史の研究では試されるだろう。

 そこで本年度の大会では、以下の構成によって、1970年代の国際関係の変動が持つ歴史的意義を再考する。

 まず東アジア国際関係史を専門とする成田千尋氏に報告をお願いする。成田氏は、1972年の沖縄返還を、日米関係だけでなく、大韓民国や中華民国の側からも捉え直し、そこに関わる複数のアクターからポストコロニアルの課題を浮かびあがらせた。その成果をふまえ、1970年代の日本が、東アジアにおいて何を問われていたのかを浮き彫りにしていただく。

 次に、社会学を専門とする木下直子氏に報告をお願いする。「慰安婦」問題は1990年代になぜあのような形で注目されたのか、そしてそこで語られないものはなんだったのか。その究明には、60年代以来のフェミニズム言説を中心として、日本社会の「慰安婦」をめぐる言説史と、語る主体の歴史的検討が必要になる。この点を深めてこられた木下氏に、60~70年代のアジアとの直面がもたらしたインパクトと困難性を考察していただく。

 この2報告に対して、アメリカの国際関係思想史を起点として、国際関係における正義や記憶の問題を幅広く論じられている三牧聖子氏、沖縄における「慰安所」と地域住民との関係を拠点として、東アジアの戦争や植民地の記憶を捉え直されている洪玧伸(玧は王ヘンに「允」)氏のお二方にコメンテーターをお願いした。今回の主題に連なる多様な文脈を明らかにしていくことで、議論の豊富化を図りたい。

 以上の構成と当日の議論によって、1970年代像の更新や、1990年代半ば以降の大転換に至る歴史像の構築の一助となれば幸いである。

 参加者諸氏の活発なご議論を期待する。

【タイム・スケジュール】

 趣旨説明:13:30~13:40

<報告>

 成田千尋(立命館大学衣笠総合研究機構):13:40~14:30

  沖縄返還をめぐる東アジア諸国の歴史・安全保障認識

 木下直子(特定非営利活動法人社会理論・動態研究所):14:40~15:30

  70年代フェミニズムの感性を辿る――「慰安婦」とアジアをめぐって

<コメント>

 三牧聖子(同志社大学 大学院グローバル・スタディーズ研究科):15:40~16:00

 洪玧伸(玧は王ヘンに「允」)(一橋大学):16:00~16:20

 全体討論:16:30~17:30

【報告要旨】

沖縄返還をめぐる東アジア諸国の歴史・安全保障認識

成田千尋(立命館大学)

 第二次世界大戦後の日本において、米国の施政権下に置かれた沖縄の返還問題は、一義的に日米間の領土問題として捉えられていた。しかし、1960年代後半に日米間の沖縄返還交渉が本格化すると、沖縄米軍基地が自国の安全保障に不可欠な役割を果たしていると捉えていた大韓民国政府及び中華民国政府は、沖縄が日本に返還されると米軍基地の自由使用が不可能になり、基地機能が低下すると捉え、日米両政府に対して基地機能の維持を求めるようになった。他方で、大韓民国と敵対していた朝鮮民主主義人民共和国政府や、中華民国と敵対していた中華人民共和国政府は、沖縄基地の安全保障上の重要性を強調する日米両政府の沖縄返還に対する姿勢を批判する一方、沖縄は日本の一部だとして、沖縄及び日本で展開されていた日本復帰/沖縄返還運動に連帯しようとする意志を表明した。

 このような東アジア諸国の沖縄をめぐる意思の表明は、1972年に沖縄の施政権返還が実現するとともに見られなくなっていくが、沖縄の日本への返還問題は、米軍基地が置かれた沖縄の安全保障上の役割が変化する可能性とともに、かつては琉球王国という独立王国であった沖縄の地位の変遷を、周辺の東アジア諸国にも想起させることとなった。このため、東アジア諸国の沖縄返還をめぐる動向には、沖縄に対する認識とともに、当時の日本に対する認識も反映されていると考えられる。

 報告者はこれまで第二次世界大戦後から70年代にかけての沖縄返還をめぐる大韓民国政府及び中華民国政府の動向・認識の変化に注目して研究を行ってきた(『沖縄返還と東アジア冷戦体制:琉球/沖縄の帰属・基地問題の変容』人文書院、2020年)。だが、当時の東アジアの状況についてより深く理解するためには、両国と敵対していた朝鮮民主主義人民共和国政府及び中華人民共和国政府の動向や認識についても明らかにする必要があると考える。両国については入手できる史料の面で限界があるが、本報告では主に両国の新聞資料を活用し、沖縄返還をめぐる両国の動向・認識の変化を明らかにするとともに、これまでの大韓民国政府及び中華民国政府に関する研究の成果をあわせて検討することで、1970年代の日本が、東アジアにおいて何を問われていたのかを考えるための一助とすることを目指す。

70年代フェミニズムの感性を辿る――「慰安婦」とアジアをめぐって

木下直子(特定非営利活動法人社会理論・動態研究所)

 1970年代の日本では、後に第二波フェミニズムとして位置付けられるようになる「侵略=アジアと闘うアジア婦人会議」の運動やウーマン・リブ運動などが展開された。どちらも1970年より活動を始め、植民地支配以来の日本の加害が継続している状態を問題視し、日本の加害・女性の被害の象徴として「慰安婦」に言及するテクストを遺している。また、1976年には加納実紀代らにより銃後史研究が、1977年には松井やよりや富山妙子らにより「アジアの女たちの会」が立ち上げられた。これらの活動は、女性たちが具体的にアジアの諸外国と出会っていく経験となった。
 本報告では、こうした運動に携わったフェミニストたちの問題意識や活動を再評価し、彼女たちがどのように時代を捉えていたのか、日本とアジアとの関係性を軸に「慰安婦」に焦点を当て考察する。報告者は、自著『「慰安婦」問題の言説空間––日本人「慰安婦」の不可視化と現前』(2017年、勉誠出版)で「慰安婦」をめぐる言説史の一端に注目したが、本報告では個別の運動家の背景にも目を向け、アジアの国際関係の変化がいかに受け止められていたのかに注意を払いながら、当時の活動が後にどう生かされたか考察を試みる。世代により見えていたものが違うが、そこで切り拓かれたものを論じながら、1990年代以降の「慰安婦」運動に連なる系譜やその後の変化について検討する。

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11月

「NHK番組アーカイブス学術利用トライアル」2023年度前期募集

★「NHK 番組アーカイブス学術利用トライアル」2023 年度前期募集
NHKでは、NHKアーカイブスの保存番組を研究用に利用していただくトライアルへの
参加研究者を募集しています。
公募で採択された研究者は、東京では NHK 放送博物館・川口 NHK アーカイブス、大阪では NHK 大阪放送局の
専用閲覧室で、ご希望の番組を研究用に閲覧することが出来ます。
○2023 年度前期閲覧期間 2023 年 4 月~9 月 (1 組 30 日間まで利用可)
※コロナ感染防止のため閲覧が延期・停止になる場合があります。
○募集対象者 大学または高等専門学校、公的研究所に所属する職員・研究者、大学院生
○募集締め切り 2023 年 1 月 31 日
○募集研究数 放送博物館(6 組)・川口 NHK アーカイブス(4 組)・大阪放送局(2 組)
応募要項等詳しくは、以下のホームページをご覧ください。
http://www.nhk.or.jp/archives/academic/