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11月

第129号【同時代史学会・2021年度大会「医療の同時代史」】

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          同時代史学会電子メールニュース

                    第129号(2021年11月7日)

【同時代史学会・2021年度大会「医療の同時代史」】
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2021年度大会「医療の同時代史」

 今年度の同時代史学会大会を、12月11日(土)に開催します。
 今年度の大会はオンライン(ZOOM)開催になります。

 参加を希望される方は、12月4日(土)までに、下記のアドレスから参加登
録を行って下さい。大会当日までに、メールにてZoomのIDをお送りします。
 なお、参加は、同時代史学会会員、および会員の紹介がある方に限定しま
す。
【大会参加登録フォーム】
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdC_lQpHInQNuBvCo6xeD8nN_694D9OHa3v4Y2fADqjNhwpXQ/viewform?usp=sf_link


タイムスケジュール
(10:00 ZOOMアクセス開始)
10:30~11:35 自由論題報告(報告者1名)

 牧野良成(大阪大学大学院文学研究科博士後期課程)
「日本労働組合総評議会大阪地方評議会における地区共闘組織の通時的検討」
*報告40分+質問受付5分+討論20分、時間は多少前後することがあります。

(12:10 総会ZOOMアクセス開始)
12:30~13:30 総会

(13:40 全体会ZOOMアクセス開始)
14:00~18:00 全体会 「医療の同時代史」

〈研究報告〉
佐藤沙織氏(尾道市立大学)「戦後日本における医療の福祉的機能」
高岡裕之氏(関西学院大学)「1960~70年代の「国民医療」と「医療の社会
化」」

〈コメント〉
廣川和花氏(専修大学)
中北浩爾氏(一橋大学)

全体会 「医療の同時代史」
趣旨文

 新型コロナウィルス感染症のパンデミックが始まって,2年が経とうとして
いる。
 つとに指摘されてきたことであるが,2011年の東日本大震災はそれ以前から
進行していた地域衰退と社会矛盾を可視化する作用をもたらした。それと同様
に,今回の新型コロナウィルス感染症の世界的大流行とそれへの対応のあり方
には,各国において歴史的に形成されてきた社会文化的構造と,近年蓄積され
てきた政治経済的矛盾とが反映している。グローバルな感染症によって,私た
ちは自身の拠って立つ社会の特質と矛盾とに向き合わざるを得なくなっている
のである。
 検討課題を日本に限定しよう。大都市圏への人口集中と,日常的に中長距離
の通勤・通学の移動を強いられる都市構造。流動的なヒト同士の接触を必然化
するサービス業の構成比が高い産業構造。内外のヒトの移動と交流を核心とす
る旅行サービスの需要喚起を,経済成長の一つの柱と位置付ける産業政策。少
子化・高齢化に伴う労働力不足に直面して,なし崩しで進行する外国人労働力
移入政策等々。近年の日本には,グローバルな感染症が国内を蹂躙する条件
が,十分すぎるほど出揃っていたと言える。にもかかわらず,そうした感染症
に対処するための手段である保健医療システムが十分に機能していないこと
が,このパンデミックで可視化された一つの,しかしとても重要な問題であっ
た。
 なぜ,世界有数の病床数を抱える日本で,コロナ発症患者が入院できないと
いう事態が続発するのか。この間,報道などでも盛んに論じられたこの問題
に,今のところ納得し得る有効な説明は与えられていない。喫緊の課題に対し
て,「まずはどうすれば良いのか」,対症療法を迫られるからである。
 では歴史研究者がこの問題に向き合うためには,どのようなアプローチが可
能か。それは,「なぜこのような構造が形成されてきたのか」を,歴史的な視
点から問うことであろう。歴史研究者は,今回のパンデミックに対して,直接
的な貢献はできないだろう。しかし,「なぜこのような構造が形成されてきた
のか」を,いま問うておくことは,中長期的には今後も続発することが十分に
予想される次のグローバルなパンデミックに備えるために,歴史研究者がなし
得る重要な知的貢献である。
 とはいえ,すでにこの問いについても,盛んに議論が提出されているように
見える。その多くは,新自由主義改革がこうした事態をもたらしたのだ,とい
うものである。すなわち,病院よりも早く機能不全に陥った保健所は,保健所
法から地域保健法への転換を契機に各地で削減が進行し,それがコロナへの初
期対応を困難にしたのだ,あるいは,現在のコロナ病床の多くを提供している
公立病院は,この数十年間,縮小・再編され続けてきたばかりか,今回のパン
デミックの直前に厚労省は公立病院の大規模削減を含む再編政策を打ち出して
いた,などといった議論である。こうした論点は,もちろん厳しく追及し続け
なければならない。
 しかし,今日の困難な事態の要因をすべて新自由主義改革で説明できるだろ
うか。これが,今大会で私たちが議論したい最大の“問い”である。新自由主
義改革が感染症対応の最前線の現場を疲弊させる大きな要因になったことは確
かだろう。だが,問題の要因はより重層的であり,それ以前から構造的に形成
されていたのではないか。少なくとも戦後日本における医療体制の形成過程
と,1970年代における何らかの変容を踏まえなければ,その後の新自由主義改
革も,今日の困難な事態も,的確に理解できないのではないか。
 今大会は以上のような問題関心のもと,以下のように,お二方の研究報告
と,お二方のコメントによって構成し,議論を深めたい。
 まず佐藤沙織氏の報告では,戦後日本における民間病院の経営構造や医療と
福祉の関係という観点から,上記の問いに迫っていただく。佐藤報告によっ
て,コロナ即応病床があっという間に払底してしまう現状について,その構造
的要因が新自由主義改革以前にすでに形成されていたことを私たちは知るだろ
う。次いで高岡裕之氏の報告では,戦後の医療史でも政治史でも十分に検討さ
れることのなかった1960~70年代の医療構想を検討していただく。その作業を
通じて,私たちは今日の日本における医療システムのオルタナティヴを歴史の
なかに発見することになるだろう。
 両報告について,廣川和花氏には医療史ないし広く歴史学への位置づけとい
う視点から,中北浩爾氏には政治史の立場から,それぞれコメントを頂戴す
る。
 当日は,会員諸氏による多数のご参加と活発な討論をお願いしたい。


同時代史学会2020年度大会 自由論題報告

「日本労働組合総評議会大阪地方評議会における地区共闘組織の通時的検討」
牧野良成(大阪大学大学院文学研究科博士後期課程)

報告要旨
 1950年から89年まで左派系労働運動を牽引した日本労働組合総評議会(総
評)は、中小企業労働者の組織化や政治運動の大衆動員など地域闘争の拠点と
なるべき存在として、都道府県内の地区単位でつくる連絡協議体(以下「地区
共闘組織」)を位置づけてきた。これら地区共闘組織は通例「地区労」と総称
されるものの、その呼称や性格は全国的に一様ではない。地区共闘組織には、
各地の状況下で自生的に発足した例が多く、総評結成後に系列化が図られた側
面があるためである。本報告では、総評大阪地方評議会(1951~89年)が府下
の総評傘下組織のみで構成した地区共闘組織「地区協議会」「地区評議会」の
編成と活動の実態を、通時的に検討する。検討にあたっては、総評中央の方針
の変遷はもちろん、右派系勢力との対抗関係をはじめ戦前来の大阪に独特な諸
点にも留意するとともに、地区共闘組織の存在や施策が後年の運動に何をもた
らしたかを考察する。

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