25
8月

第168号【同時代史学会2024年度大会のお知らせ】

===================================

          同時代史学会電子メールニュース

                    第168号(2024年8月25日)

【同時代史学会2024年度大会のお知らせ】
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
 2024年度大会「空襲/空爆とその記憶の同時代史(仮)」

 日時
 2024年12月7日
 会場
 駒澤大学 駒沢キャンパス 3号館(東京都世田谷区駒沢1-23-1)

 全体会 13:30~17:30

<報告者>
 長志珠絵(神戸大学)
 「防空と銃後」(仮)
 千地健太(東京大空襲・戦災資料センター学芸員)
 「東京大空襲における朝鮮人の空襲被害ー実態、証言、展示ー」
<コメント>
 田中利幸(歴史家)
 伊香俊哉(都留文科大学)


趣旨文
空襲/空爆とその記憶の同時代史(仮)

 空爆による無差別大量虐殺は、第一次世界大戦から本格的に始まり、第二次
世界大戦を経て、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、コソボ紛争、アフガ
ン・イラク戦争、シリア内戦、そして現在もなお続くロシアのウクライナ攻撃
やイスラエルのガザ地区攻撃に至るまで、およそ100年以上にわたって連続し
ている。
 第一次世界大戦後に戦略爆撃を体系化したイタリアの将軍ジュリオ・ドゥー
エは、空爆は「残虐な特性にもかかわらず流血が少ないので、高い立場から見
れば従来の戦闘よりも人道的である」と述べて、無差別爆撃を正当化した。加
害者研究においても、被害者との物理的・心理的距離は罪責感を麻痺させ、加
害行為を容易にすることが指摘されているが、「高い立場」から爆撃を命令
し、爆弾投下を可能にした20世紀以降の「空の戦争」は、爆撃の下で苦しむ無
数の人々の視点を完全に欠落させることで行われてきた。1970年代以降の空襲
記録運動とその継承活動は、爆撃を受ける側の「空襲」の視点に立ち、こうし
た「高い立場」から攻撃を加える「空爆」を批判的に捉え返す営為であり、現
在進行中の空爆の下で起きている現実と、今後長期にわたって続く破壊的な影
響を人類につきつけている。
 一方、これまでも度々指摘されてきたように、帝国主義の時代に誕生した飛
行機が初めて戦争の兵器として利用されたのは、バルカン半島と北アフリカで
の植民地戦争からであり、日本も1930年に植民地統治下の台湾で起きた霧社事
件の際に、空爆による大規模な「鎮圧」作戦を行った。また、十五年戦争にお
いて日本は、アメリカによる無差別爆撃の被害を受ける前に、錦州や南京、重
慶に無差別爆撃を行う加害国でもあった。さらに、連合国軍側の攻撃対象は、
大日本帝国の植民地や東南アジア各地の日本軍の拠点、「満洲」の満鉄沿線の
工場地帯に及んだ。それだけではなく、原爆が投下された広島・長崎と同様
に、東京や大阪などの大都市には、戦時労働力として動員された植民地出身の
人々が居住しており、多くの人々が空襲の被害を受けた。彼らの被害はこれま
であまり語られてこなかったが、被害の実態調査や、「創氏改名」後の日本人
名で慰霊碑に記録されてきた名前を本名に変更する取り組みなどが近年市民活
動によって進められている。彼らがなぜそこにいたのかをふまえれば、「日本
国民の被害」として均質化されがちな空襲経験を、植民地支配責任の観点から
再度捉え直す必要があるだろう。
 以上をふまえて、一人目の報告者である長志珠絵氏には、戦時下の「防空」
の動員・管理の対象であった女性や植民地出身者について報告していただく。
また二人目の千地健太氏には、東京大空襲戦災資料センターにおける朝鮮人被
害者に関する展示の経緯について報告していただく。両報告を通じて、空爆/
空襲論においては、顔も名前もない集合的な死者として、あるいは「庶民」
「民衆」「日本人」として括られがちであった空襲言説をジェンダーと植民地
主義の観点から再考する場となるであろう。また、コメンテーターは伊香俊哉
氏と田中利幸氏に依頼した。
 空襲/空爆の問題は、現在の日本社会とも無縁ではない。日本政府は植民地
戦争や植民地支配に起因する空襲の被害者、中国への侵略戦争の際に行った爆
撃の被害者に対する謝罪や賠償を行っておらず、国内の空襲被害者について
も、「戦争被害受忍論」を理由に補償を拒み続けている。また、朝鮮戦争・ベ
トナム戦争の際には、在日米軍基地は米軍機の出撃・補給基地として無差別爆
撃に関わった。そして、現在進行中の空爆による無差別大量虐殺を止めること
ができていない。本シンポジウムが、20世紀初頭から現在まで続く、無差別大
量虐殺とその不処罰の歴史に抗するための議論の場となることを期待したい。


<主要参考文献>
荒井信一『空爆の歴史―終わらない大量虐殺』岩波書店、2008年。
伊香俊哉『戦争はどう記憶されるのか 日中両国の共鳴と相剋』柏書房、
 2014年。
栗原俊雄『東京大空襲の戦後史』岩波書店、2022年。
長志珠絵「『防空』のジェンダー ―戦前戦後における日本の空襲言説の変容
と布置」『ジェンダー史学』11号、2005年。
長志珠絵「交差する植民地主義とジェンダー ―歴史認識としての空襲」『日
本思想史研究会会報』39号、2009年。
田中利幸『空の戦争史』講談社、2008年。
塚崎昌之『大阪空襲と朝鮮人そして強制連行』大阪空襲75年朝鮮人犠牲者追悼
 集会実行委員会、2022年。
林博史『朝鮮戦争 無差別爆撃の出撃基地・日本』高文研、2023年。
前田哲男『戦略爆撃の思想 ―ゲルニカ、重慶、広島』凱風社、2006年。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

◆このメールマガジンは、同時代史学会会員の相互連絡を目的として、会員の
 みに送信されるものです。なお、メールアドレスは同時代史学会会員名簿に
 記載されたものを利用しています。ご了承下さい。

◆バックナンバーは http://www.doujidaishi.org/doujidaishi-mailnews/
 に転載されます。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
2
8月

第167号【同時代史学会2024年度大会 自由論題報告者の募集】

===================================

          同時代史学会電子メールニュース

                    第167号(2024年8月2日)

【同時代史学会2024年度大会 自由論題報告者の募集】
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
同時代史学会2024年度大会 自由論題報告者の募集

 今年度の同時代史学会年次大会は、本年12月7日(土)、駒澤大学(東京都
世田谷区)にて開催の予定です。つきましては、当日午前中に実施される自由
論題報告の報告者を募集します。日頃の研鑽を発表し合い、議論を交わせる貴
重な機会です。会員の皆様には、ぜひ奮ってご応募くださいますよう、お願い
申し上げます。
 なお、機材や運営上の観点から、本年度の自由論題については原則、対面開
催となります。この点、ご承知おきください。

1.日時:2024年12月7日(土) 午前10時開始(最大13時20分終了予定)
  *御一人の持ち時間は報告40分+討論20分=計1時間を想定してください。
2.場所:駒澤大学 駒沢キャンパス 3号館
  *アクセス:https://www.komazawa-u.ac.jp/access/
  *キャンパスマップ: https://www.komazawa-u.ac.jp/facilities/campus/komazawa.html
3.開催形態:対面開催
4.論題:日本を中心とする第二次世界大戦期以降の歴史を主な対象とする歴
  史的研究全般
5.エントリー資格:同時代史学会会員であること
  *非会員で応募される方は、エントリーと同時に入会手続きをお済ませく
   ださい。
   参照・本会HP「入会のご案内」: http://www.doujidaishi.org/about/admission.html
  *当日、PCを利用される方は、御自身で持ち込みを御願いします(Mac使
   用の場合はアダプタも含む)。
6.エントリー方法:以下の項目を、電子メールか郵送で、下記9までお知ら
  せください。
  ① 報告者氏名、及び現在の所属
  ② 報告タイトル
  ③ 報告要旨(400字以内)
7.採否:理事会で審査の上、9月末日までに応募者本人に直接採否を通知し
  ます。
8.締切:2024年8月31日(土)必着
9.応募及び問い合わせ先:戸邉秀明(自由論題担当理事・東京経済大学教員)
  E-mail:tobe ★ tku.ac.jp
  〒185-8502 東京都国分寺市南町1-7-34 東京経済大学 戸邉秀明 宛
*郵送の場合、封筒に「同時代史学会自由論題応募」と書き添えてください。
以上
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

◆このメールマガジンは、同時代史学会会員の相互連絡を目的として、会員の
 みに送信されるものです。なお、メールアドレスは同時代史学会会員名簿に
 記載されたものを利用しています。ご了承下さい。

◆バックナンバーは http://www.doujidaishi.org/doujidaishi-mailnews/
 に転載されます。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐