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同時代史学会電子メールニュース
第9号(2009年3月11日)
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※第21回研究会でコメンテーターをされる矢野敬一さんより投稿がありました
ので、ご紹介させていただきます。なお、矢野さんのウェブサイトは
http://www.ipc.shizuoka.ac.jp/~ebkyano/
です(長谷川)。
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14日にコメンテーターをいたします静岡大学の矢野敬一です。せっかくの機
会ですので、現在私が関心を持っていることについて、その折、ご教示いただ
けたらと存じます。よろしくお願いいたします。
今の私の関心の一つは、昭和戦前期、柳田国男が同時代の学知の中でどのよ
うに位置付けられるのか、という問題です。鹿野さんの『近代日本の民間学』
では民間学は第一義的には「運動」として存在していたという指摘があり、ま
たそうした文脈の中で柳田も論じられています。そのあたりをもう少し、国史
学との関連で掘り下げられないか。論点を具体的にいえば、下記のようになり
ます。
□国史学での読者(とりわけ教員層)リクルートの手法
柳田国男は大正から昭和戦前期にかけて『郷土研究』や『民間伝承』といっ
た雑誌を立ち上げ、「紙上問答」欄や民俗語彙の紹介欄を設け、読者の投稿を
促し柳田と読者、あるいは読者相互のコミュニケーションを図る仕掛けを施し
ていきます。そうした雑誌誌面への参加の感覚をもたらすことによって、読者
をリクルートしていったわけです。特に『民間伝承』での読者として想定され
ていたのは、教員層でした。
その一方で国史学では、同様の取り組みがたとえば大正期までの日本歴史地
理学会の『歴史地理』でなされていました。喜田貞吉は明治42年に同誌で、読
者相互が「遺蹟遺物記録伝説」の調査結果を誌面に相互に報告しあうことを求
め、また誌上には「問答」欄も設けられていたのです。しかしそうした取り組
み姿勢は大正中期には希薄になっていきます。
国史学では、昭和戦前期にあってアカデミズムに向けてより広範な読者層
(とりわけ教員層)をリクルートしていくような仕掛けは、どのように作動し
ていたのか。例えば地理学では文検のような資格試験合格のための動機づけ
が、読者をリクルートする回路として作用していました。昭和初年でいえば日
本地理学会の会員は百人に満たないにもかかわらず、学会誌『地理学評論』の
部数は1千を超えていたのです。日本地理学会の会員が文検の出題者であるた
めに、試験対策として学会誌が文検突破を目指す教員層に読まれることになっ
たのです。
国史学でも、同じような状況は見られたのでしょうか。それ以外にも国史学
へといざなうような、読者への働きかけはどのようなものがあったのでしょう
か。民間学の「運動」としての側面に対して、国史学の「運動」としての側面
はどう考えられるのか、ということです。そこから柳田の立ち位置も、改めて
見えてくるような気がします。
なおこれと関連する拙稿として、「戦前における柳田国男著作の受容 ―櫻井
徳太郎文庫所蔵書籍を事例として―」があります。
http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/handle/10297/2400
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担当 池田慎太郎
編集・管理 長谷川亮一
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